#3「昔の野球肘」は終わっていない? 内側上顆の骨片と肘の安定性

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成長期の野球肘、その「骨片」は大人になっても影響する?

成長期の野球選手では、繰り返す投球によって肘の内側に負担がかかり、上腕骨内側上顆に骨片がみられることがあります。

痛みが落ち着いたあとも骨片が残っていた場合、肘を守る筋肉の働きに影響するのでしょうか。

今回は、大学野球選手を対象とした研究から、内側上顆の形態と肘の動的安定性との関係を紹介します。

結論:骨片がある選手では、筋肉による肘の安定化作用が低下している可能性がある

この研究では、内側上顆に骨片を認める選手で、前腕の筋肉を収縮させたときの安定化作用が小さくなっていました。

つまり、内側上顆の骨片は、単なる「昔の野球肘の跡」ではなく、現在の肘機能とも関係している可能性があります。

肘を守っているのは、靱帯だけではない

投球時には、肘の内側を開く方向へ大きな外反ストレスが加わります。

このストレスに抵抗する代表的な組織が、肘内側側副靱帯(UCL)です。

一方、浅指屈筋や尺側手根屈筋などの前腕屈筋・回内筋群も、収縮することで肘の内側を安定させています。

UCLが「静的な安定装置」だとすれば、前腕の筋肉は動きながら肘を守る「動的な安定装置」です。

これらの筋肉が付着する場所の一つが、上腕骨内側上顆です。

今回はどのように調べたのか

対象は、男子大学野球選手48名です。

超音波画像を用いて、投球側の内側上顆を3群に分類しました。

  • 正常群:29名
  • 肥大型群:7名
  • 分離型群:12名

さらに、安静時、重力による外反ストレス時、第4・5指を曲げて前腕筋群を収縮させたときの肘内側関節裂隙を測定しました。

結果:大学野球選手の4人に1人に骨片がみられた

48名のうち、分離型は12名でした。

つまり、今回の大学野球選手では、25%、およそ4人に1人に骨片がみられたことになります。

さらに筋収縮時の垂直距離は、正常群の1.01 ± 0.92 mmに対し、分離型群では0.16 ± 0.58 mmと小さくなっていました。

この垂直距離は、前腕筋群の収縮によって尺骨を内側へ移動させる働きを反映します。

分離型群では、筋肉を収縮させても尺骨を十分に内側へ引き戻せず、前腕筋群による動的安定性が低下していた可能性があります。

骨片があるだけで「危険」とは限らない

本研究は、ある一時点で骨の形態と肘機能の関係を調べた横断研究です。

そのため、骨片が動的安定性の低下を引き起こしたのかは断定できません。また、骨片がある選手全員に痛みや投球障害が起こるわけでもありません。

ただし、成人選手でも骨片がみられる場合は、画像所見だけで終わらせず、前腕筋群が肘を安定させる機能にも目を向ける必要がありそうです。

続く#4では、内側上顆の骨片と「肘の伸展制限」「Moving Valgus Stress Test」との関係を紹介します。

まとめ

  • 大学野球選手48名のうち、25%に内側上顆の骨片がみられた
  • 分離型群では、筋収縮時の尺骨の内側移動が小さかった
  • 内側上顆の骨片は、前腕筋群による肘の動的安定性と関係する可能性がある
  • 骨片の有無だけでなく、肘の機能をあわせて評価することが重要

参考文献

Orimoto K, et al. Influence of medial epicondyle morphology on the contribution of flexor-pronator muscle contractions to dynamic elbow stability. JSES Reviews, Reports, and Techniques. 2026;6(2):100680.

論文全文(Open Access)

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